生成AIで仕事が激減したベトナムオフショア拠点の未来
- Daisuke Neigisi

- 7月29日
- 読了時間: 12分
生成AIの登場によって、ベトナムオフショア開発の現場は大きな転換点を迎えています。
これまで複数のエンジニアが何日もかけていたプログラムの作成、テストコードの生成、エラー調査、仕様書の下書き、ソースコードのレビューなどを、生成AIが短時間で支援できるようになりました。
実際に生成AIを開発工程へ組み込むと、従来と同じ仕事を、従来より少ない人数で進められる場面が増えていきます。
そのため、ベトナムオフショア拠点では、これまで人間が担ってきた定型的な仕事が確実に減っていくでしょう。
しかし、これはベトナムオフショア開発が不要になるという話ではありません。
生成AIによってなくなるのは、ベトナムオフショア開発そのものではなく、安い人材を大量
に配置し、人月を積み上げるだけのビジネスモデルです。
これからのベトナムオフショア拠点には、「人を提供する拠点」から「事業成果を生み出す拠点」への変化が求められます。
ベトナムオフショア開発を支えてきた「人月」という考え方
これまでのオフショア開発では、何人のエンジニアを、何カ月稼働させるかという「人月」が、見積もりや契約の中心でした。
5人のエンジニアが6カ月働けば30人月。
仕事が増えれば人を増やし、納期が厳しくなればさらに人を追加する。
日本とベトナムの人件費差を活用し、日本国内よりも安価に開発体制を確保することが、ベトナムオフショア開発の大きな価値でした。
この仕組みは、日本企業のエンジニア不足を補い、開発コストを抑えるうえで有効でした。
しかし、生成AIはこの前提を根本から変えようとしています。
定型的な画面の作成、既存機能を参考にしたプログラムの実装、テストケースの洗い出し、技術調査、翻訳、ドキュメント作成などは、生成AIによって大幅に効率化できます。
経験のあるエンジニアが生成AIを適切に活用すれば、これまで5人で行っていた仕事を、2人や3人で進められる可能性があります。
この状況で、以前と同じ人数を配置し、同じ期間をかけ、同じように人月を請求し続けることは難しくなります。
顧客から見れば、生成AIによって効率化できるにもかかわらず、従来と変わらない人数と費用を求められることに納得できないからです。
「安いエンジニアを提供する会社」は選ばれなくなる
顧客が本当に欲しいのは、エンジニアの人数ではありません。
新規事業を早く立ち上げること。
業務を効率化すること。
売上を増やすこと。
運用コストを削減すること。
システムを安定的に稼働させること。
そして、システム開発への投資を成功させることです。
これまでは、開発に必要な作業量と人員数に一定の関係がありました。そのため、優秀なエンジニアを安価に確保できること自体が、オフショア開発会社の競争力になっていました。
しかし、生成AIによって一人当たりの生産性が大きく向上すれば、顧客が評価するポイントも変わります。
「何人のエンジニアを用意できるか」ではなく、「どれだけ早く、どれだけ高い品質で、どのような事業成果を出せるか」が問われます。
生成AI時代に、安さだけを追求するオフショア開発会社は、さらに安い会社との価格競争に巻き込まれます。
一方で、顧客の事業を理解し、成果に責任を持てる会社は、単価では比較されにくくなります。
定型的な開発作業は生成AIに任せる
今後のベトナムオフショア拠点では、人間と生成AIの役割を明確に分ける必要があります。
生成AIに任せるべきなのは、一定のルールやパターンに沿って処理できる仕事です。
例えば、次のような業務です。
定型的なプログラムの作成
テストコードやテストデータの生成
エラー原因の一次調査
ソースコードの説明
ドキュメントや議事録の下書き
日本語、英語、ベトナム語の翻訳
既存コードの修正候補の提示
コードレビューの一次確認
技術情報や類似事例の調査
こうした仕事を、すべて人間が手作業で行い続ける必要はありません。
生成AIを活用して開発スピードを高め、少ない人数でより多くの価値を生み出すべきです。
ただし、生成AIが作成したプログラムを、そのまま本番環境へ反映すればよいわけではありません。
生成AIは、顧客企業の経営方針、現場の事情、過去の意思決定、社内の力関係、法務やセキュリティ上の制約まで理解しているわけではないからです。
生成AIは強力な開発支援者ですが、最終的な責任者ではありません。
だからこそ、人間には、より高度な役割が求められます。
人間は上流工程と判断に集中する
生成AI時代に人間が集中すべきなのは、単純な作業ではなく、判断を伴う仕事です。
顧客が抱えている課題を正しく理解する。
何を開発し、何を開発しないのかを決める。
限られた予算の中で優先順位をつける。
関係者の意見を整理し、合意形成を進める。
業務を理解し、システム要件へ落とし込む。
生成AIが作成した成果物の品質を判断する。
セキュリティや運用上のリスクを確認する。
これらは、生成AIへ指示を入力するだけでは完結しません。
例えば、経営者から「営業活動を効率化したい」と相談されたとしても、それだけでは開発するシステムは決まりません。
顧客管理を改善するのか。
見積もりを自動化するのか。
営業担当者の活動を可視化するのか。
生成AIによる問い合わせ対応を導入するのか。
既存システムを改修するのか、新しいシステムを作るのか。
経営課題を整理し、投資対効果を考え、実行可能な開発計画へ変換する必要があります。
このような上流工程と意思決定支援こそ、生成AI時代に人間が提供するべき価値です。
オフショア拠点を人数や稼働率で評価しない
これまでのオフショア拠点では、エンジニアの人数や稼働率が重要な管理指標でした。
何人が稼働しているか。
予定していた人月を消化できているか。
メンバーの稼働率が100%に近いか。
しかし、生成AI時代にこの評価を続けると、現場は効率化できなくなります。
生成AIを使って短時間で仕事を終わらせるより、時間をかけて稼働率を維持する方が評価されてしまうからです。
これでは、開発会社と顧客の利益が一致しません。
今後は、人数や作業時間ではなく、成果を評価する必要があります。
例えば、次のような指標です。
要件決定からリリースまでの期間
生成AIによって削減できた開発工数
リリース後に発生した不具合の件数
仕様の認識違いによる手戻りの量
自動テストの実施率
運用業務の自動化率
システムの利用率
顧客業務の削減時間
システムによって生まれた売上や利益
サービスの継続率や顧客満足度
大切なのは、「何人が働いたか」ではありません。
「顧客の事業をどれだけ前に進めたか」です。
開発して終わりでは価値を生み出せない
従来の受託開発では、システムを納品することが一つのゴールでした。
しかし、システムは完成しただけでは価値を生みません。
実際に利用され、業務が改善され、顧客体験が向上し、売上や利益につながって初めて投資の意味が生まれます。
リリース後には、さまざまな課題が発生します。
利用者が想定どおりに使ってくれない。
必要な機能が不足している。
業務フローとシステムが合っていない。
アクセスが増えて性能が低下する。
障害やセキュリティ上の問題が発生する。
事業方針が変わり、システムの優先順位も変わる。
こうした変化に継続的に対応しなければ、システムは徐々に使われなくなります。
これからのベトナムオフショア拠点には、開発して終わるのではなく、企画、要件定義、開発、テスト、リリース、運用監視、改善までを継続的に支援する役割が求められます。
生成AIによってシステムを作るスピードが上がるほど、作った後にどのように育てるかが重要になります。
「開発工場」から「顧客企業の変革パートナー」へ
従来のベトナムオフショア拠点は、日本側から渡された仕様書をもとにプログラムを作る「開発工場」として扱われることが少なくありませんでした。
日本側が考え、ベトナム側が作る。
日本側が指示し、ベトナム側が実行する。
この役割分担は分かりやすい一方で、ベトナム側に顧客の事業や開発の目的が十分に共有さ
れないという問題もありました。
なぜこの機能が必要なのか。
誰の課題を解決するのか。
どの数字を改善したいのか。
リリース後にどのような状態を目指すのか。
目的が分からないまま仕様書どおりに開発すると、仕様書に書かれていない問題へ対応できません。
生成AIによって指示どおりにプログラムを作る仕事の価値が下がるほど、事業目的を理解して提案する力の価値は高まります。
これからのオフショア拠点は、与えられた作業をこなすだけではなく、顧客と一緒に考えなければなりません。
「この機能は本当に必要ですか」
「別の方法なら、より早く検証できます」
「この仕様では運用負荷が高くなります」
「まずは小さなPoCで効果を確かめましょう」
「売上への影響を確認してから、次の投資を判断しましょう」
このような提案ができる拠点は、単なる外注先ではありません。
顧客企業の変革を支えるパートナーです。
生成AIがあっても、複雑な仕事はなくならない
生成AIは、型のある開発や定型作業を大幅に効率化します。
一方で、企業のシステム開発には、簡単に自動化できない仕事が数多く残ります。
複数の部署や取引先が関係するプロジェクト。
例外処理の多い業務。
基幹システムや外部サービスとの複雑なデータ連携。
古いシステムからのデータ移行。
アクセス管理や操作ログなどの内部統制。
ITGC、J-SOX、IPO準備への対応。
リリース後の障害対応、性能監視、セキュリティ対策。
こうした領域では、単にプログラムが動くだけでは不十分です。
関係者と対話し、リスクを整理し、運用を想定しながら、システム全体を設計する必要があります。
Tomorrow Futureが目指しているのも、単なる初期コストや納期の最小化ではありません。
前提、リスク、代替案、段階的な投資まで含めて整理し、顧客企業の投資判断の成功確度を高めることです。
生成AIによる自動化だけでは補えない、複雑性、ガバナンス、セキュリティ、運用まで含めて支援することが、これからの開発会社に必要な役割だと考えています。
人を減らすのではなく、人の役割を変える
生成AIを導入したとき、最初に「何人減らせるか」を考える企業は少なくありません。
確かに、従来と同じ仕事量であれば、必要な人数は減る可能性があります。
しかし、生成AIの目的を人員削減だけにしてしまうと、新しい価値を生み出す機会を失います。
生成AIによって生まれた時間を、何に使うのか。
顧客との対話に使う。
上流工程の品質を高める。
テストやセキュリティを強化する。
運用業務をさらに自動化する。
これまで予算不足で実現できなかった改善を行う。
複数の新規事業を、小さく早く検証する。
人を減らすことより、人が担当する仕事を変えることが重要です。
プログラムを書く時間を減らし、事業を考える時間を増やす。
報告書を作る時間を減らし、顧客と対話する時間を増やす。
単純なテストを行う時間を減らし、本当に起こり得るリスクを考える時間を増やす。
これが、生成AI時代のオフショア開発に必要な変化です。
Tomorrow Futureが目指すベトナムオフショア開発
Tomorrow Futureは、日本側の企画力、要件定義力、プロジェクトマネジメント力と、ベトナム側の開発力を組み合わせてシステム開発を支援しています。
しかし、私たちが目指しているのは、日本より安くエンジニアを提供することではありません。
顧客が抱えている曖昧な課題を整理する。
事業として何を実現したいのかを明確にする。
必要な機能と不要な機能を判断する。
小さく検証しながら、投資の規模を決める。
システムを開発し、運用し、継続的に改善する。
生成AIとベトナムオフショア開発を組み合わせ、開発コストだけではなく、事業成果まで考えることが私たちの役割です。
システム開発の経験がなくても問題ありません。
要件が決まっていなくても構いません。
新規事業のアイデアだけでも、既存業務への漠然とした問題意識だけでも、そこから一緒に整理していきます。
企画、要件定義、開発、品質管理、プロジェクト管理、運用監視、生成AI活用まで、必要な領域を一気通貫で支援します。
生成AIは、ベトナムオフショア開発を終わらせない
生成AIによって、ベトナムオフショア拠点の仕事は確実に減ります。
ただし、減るのは定型的な作業です。
指示されたプログラムを作るだけの仕事です。
人数と作業時間を積み上げるだけの仕事です。
その一方で、顧客の事業を理解する仕事、投資判断を支える仕事、複雑なシステムを設計する仕事、品質と安全性を守る仕事、リリース後も改善を続ける仕事の価値は高まります。
ベトナムオフショア拠点は、「人を提供する拠点」から「事業成果を生み出す拠点」へ変わらなければなりません。
定型的な仕事は生成AIに任せ、人間は上流工程と判断に集中する。
人数や稼働率ではなく、スピード、品質、売上貢献で評価する。
開発して終わりではなく、企画から運用、改善まで継続的に支援する。
単なる開発工場ではなく、顧客企業の変革を支えるパートナーになる。
生成AIは、ベトナムオフショア開発の終わりを意味するものではありません。
むしろ、これまでの古い役割から抜け出し、より高い価値を提供するための大きな機会です。
生成AIによって仕事が減ったと考えるのか。
生成AIによって、より重要な仕事へ挑戦できるようになったと考えるのか。
その考え方の違いが、これからのベトナムオフショア拠点の未来を大きく左右します。
Tomorrow Future株式会社では、ベトナムオフショア開発をこれから活用したい企業、すでに活用しているものの品質やコミュニケーションに課題を感じている企業、新規事業やシステム開発の進め方が分からない企業からのご相談を受け付けています。
まだ要件が決まっていない段階からでも、企画、要件定義、開発、運用・改善まで一緒に整理します。
システムを作ることではなく、システム投資を事業成果につなげること。
それが、生成AI時代にTomorrow Futureが提供したいベトナムオフショア開発です。




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