要件定義の『解像度』が10%上がれば、開発コストは30%下がる。TFが上流工程に執着する理由
- Daisuke Neigisi

- 6月4日
- 読了時間: 10分

システム開発において、最もコストが高くつくものは何でしょうか。
エンジニアの単価でしょうか。開発期間の長さでしょうか。外注先の選定ミスでしょうか。
もちろん、それらも重要です。
しかし、私たちTomorrowFuture株式会社が多くの開発現場を見てきて強く感じるのは、開発コストを大きく左右する最大の要因は「要件定義の解像度」だということです。
要件定義の解像度が低いまま開発を始めると、後工程で必ず認識違いが発生します。
「こういう意味だと思っていた」
「ここまで含まれていると思っていた」
「この例外処理は想定していなかった」
「運用で誰が対応するのか決まっていなかった」
「本番後に初めて業務上の問題が見えてきた」
このようなズレは、開発が進めば進むほど修正コストが高くなります。
逆に、要件定義の解像度が10%上がるだけで、手戻り、仕様変更、認識齟齬、追加開発、運用トラブルの発生率は大きく下がります。実務感覚として、上流工程の精度が上がれば、開発全体のコストは30%近く下げられる可能性があります。
だからこそTFは、上流工程に強くこだわります。
要件定義とは、仕様書を作ることではない
要件定義というと、多くの方が「仕様書を作る工程」と考えます。
もちろん、仕様書は重要です。画面一覧、機能一覧、業務フロー、データ項目、権限設計、外部連携、非機能要件などを整理することは、システム開発において欠かせません。
しかし、TFが考える要件定義は、単なるドキュメント作成ではありません。
私たちにとって要件定義とは、事業の目的、業務の現実、組織の制約、将来の拡張性、運用時のリスクまで含めて、投資判断の精度を上げる工程です。
つまり、要件定義とは「何を作るか」を決めるだけではなく、次の問いに答えるための工程です。
このシステムは、本当に今作るべきなのか。最初からすべて作るべきなのか。MVPとして小さく始めるべきなのか。業務フローを変えれば、開発しなくて済む部分はないか。将来の運用負荷は誰が持つのか。障害が起きたとき、どのように検知し、誰が判断し、誰が対応するのか。この投資は、事業として回収できるのか。
ここまで踏み込んで初めて、要件定義は「開発の準備」ではなく「経営判断の材料」になります。
スタートアップこそ、上流工程を軽視してはいけない
スタートアップや新規事業では、スピードが非常に重要です。
市場に早く出す。ユーザーの反応を見る。改善を繰り返す。失敗から学ぶ。
これは本当に大切です。
一方で、「スピードが大事だから要件定義は軽くてよい」という考え方は、とても危険です。
なぜなら、スタートアップにとっての失敗や課題は、単なるトラブルではなく、事業を強くするための貴重な学習資産だからです。
失敗した原因が分からない。どこで認識違いが起きたのか分からない。なぜユーザーが離脱したのか分からない。なぜ運用が回らなかったのか分からない。なぜ障害が起きたのか記録されていない。
この状態では、失敗が血となり骨となりません。
スタートアップに必要なのは、失敗しないことではありません。失敗から正しく学び、次の意思決定に活かせる仕組みを持つことです。
だからこそ、スタートアップこそ要件定義とインシデント管理が重要なのです。
インシデントは「悪」ではなく、未定義の要件が表面化したもの
システム開発において、インシデントは避けたいものです。
本番障害。データ不整合。外部連携エラー。権限設定ミス。運用手順の抜け漏れ。想定外のユーザー行動。負荷増加によるパフォーマンス低下。
こうしたインシデントは、事業に大きな影響を与える可能性があります。
しかし、私たちはインシデントを単なる失敗とは捉えていません。
インシデントとは、要件定義の段階で見えていなかった課題が、本番環境で表面化したものです。
つまり、インシデントには必ず学びがあります。
どの前提が間違っていたのか。どの業務フローが曖昧だったのか。どの例外処理が漏れていたのか。どの監視項目が不足していたのか。どの権限設計が甘かったのか。どの判断基準が現場に共有されていなかったのか。
これを丁寧に分析し、次の要件定義や運用設計に戻していくことで、システムも組織も強くなります。
スタートアップにとって、課題や失敗は避けるべきものではなく、成長の材料です。ただし、それは「管理され、記録され、改善につながる失敗」である必要があります。
開発コストが膨らむ会社に共通すること
開発コストが予定より膨らむ会社には、いくつか共通点があります。
最初に目的が曖昧なまま開発を始めてしまう。業務フローが整理されていない。意思決定者と現場担当者の認識がズレている。例外処理を後回しにする。運用開始後の体制が決まっていない。セキュリティや権限設計を軽視する。外部連携やデータ移行の難しさを過小評価する。見積もりの安さだけで開発会社を選んでしまう。
この状態で開発を始めると、最初の見積もりは安く見えても、結果的に高くつきます。
なぜなら、開発中に仕様が増え、手戻りが発生し、テストが膨らみ、本番後の問い合わせや障害対応が増えるからです。
本当に見るべきは、初期見積もりの安さではありません。見るべきは、開発後も含めた総コストです。
開発費だけでなく、運用費、保守費、障害対応費、追加改修費、社内調整コスト、意思決定の遅延コストまで含めて考える必要があります。
TFが上流工程にこだわる理由は、まさにここにあります。
AI駆動開発の時代だからこそ、人間の上流設計力が問われる
近年、AI駆動開発によって、コードを書くスピードは大きく上がりました。
AIを活用すれば、画面、API、テストコード、ドキュメント作成など、多くの作業を効率化できます。これからの開発現場において、AIの活用は間違いなく標準になっていくと思います。
しかし、AIが得意なのは、明確に定義されたものを高速に形にすることです。
逆に言えば、そもそも何を作るべきか、どこにリスクがあるのか、どの順番で投資すべきか、誰の合意形成が必要なのか、運用で何が起きるのかといった部分は、人間側の設計力が問われます。
AIで開発スピードが上がるほど、間違った要件も高速に実装されてしまいます。
これは非常に怖いことです。
作るスピードが上がる時代だからこそ、「何を作るべきか」「何を作らないべきか」「どこまで作るべきか」を見極める上流工程の価値は、むしろ高まっています。
TFは、AIを否定しているわけではありません。むしろ、AIを積極的に活用すべきだと考えています。
ただし、AIを活用する前に、事業、業務、技術、運用、リスクを整理する必要があります。そこが曖昧なままAI駆動開発に進むと、早く作れるけれど、使えないシステムが生まれてしまいます。
ベトナムオフショア開発でも、成否を分けるのは上流工程
ベトナムオフショア開発を活用する企業が増えています。
コストメリット、優秀なエンジニア、開発リソースの確保という意味で、ベトナムオフショア開発には大きな可能性があります。
しかし、オフショア開発がうまくいかない原因の多くは、開発力そのものではありません。
多くの場合、上流工程の曖昧さが原因です。
要件が曖昧なまま海外チームへ依頼する。仕様変更の背景が伝わっていない。優先順位が共有されていない。日本側の意思決定が遅い。レビュー基準が不明確。運用後の責任範囲が決まっていない。
この状態では、どれだけ優秀なエンジニアを集めても、プロジェクトは迷走します。
TFが提供している価値は、単にベトナムの開発チームを紹介することではありません。
日本側で企画、要件定義、業務整理、プロジェクト管理、品質管理、運用設計を行い、ベトナム側の開発力を最大限に活かすことです。
オフショア開発は、安く作るための手段ではありません。正しく設計すれば、事業成長を支える強力な開発体制になります。
そのために必要なのが、上流工程の解像度です。
TFが上流工程で重視していること
TFが要件定義や上流工程で重視しているのは、きれいな資料を作ることではありません。
重視しているのは、開発後に本当に使われ、運用され、事業成果につながるシステムにすることです。
そのために、私たちは次のような観点を大切にしています。
事業目的の明確化。誰のどの課題を解決するのか。なぜ今このシステムが必要なのか。投資対効果はどこで判断するのか。
業務フローの整理。現場では実際にどのような作業が行われているのか。例外処理はどこにあるのか。属人化している業務はないか。
機能の優先順位付け。最初からすべて作る必要があるのか。MVPとして何を先に出すべきか。後回しにしてもよい機能は何か。
非機能要件の整理。セキュリティ、権限、性能、監視、ログ、バックアップ、可用性をどう考えるのか。
運用設計。リリース後に誰が見るのか。障害が起きたら誰が判断するのか。問い合わせ対応はどこまで必要なのか。改善サイクルをどう回すのか。
インシデント管理。問題が起きたときに、記録し、分析し、再発防止につなげる仕組みがあるか。
このような観点を最初に整理することで、開発の手戻りを減らし、無駄なコストを抑え、プロジェクトの成功確率を高めることができます。
上流工程はコストではなく、最も回収率の高い投資である
要件定義や上流工程に時間をかけることを、コストだと考える方もいます。
しかし、私たちは逆だと考えています。
上流工程こそ、最も回収率の高い投資です。
なぜなら、上流で1つの認識違いを解消できれば、後工程で何十時間、何百時間もの手戻りを防げるからです。
上流で例外処理を1つ洗い出せば、本番後の重大インシデントを防げるかもしれません。上流で運用設計をしておけば、リリース後の混乱を防げるかもしれません。上流で投資判断を整理しておけば、不要な機能開発を止められるかもしれません。
システム開発は、作って終わりではありません。
むしろ、リリースしてからが本番です。使われ続け、改善され続け、事業に貢献して初めて価値があります。
だからこそ、TFは上流工程に執着します。
失敗を資産に変える会社が、強いシステムを作る
スタートアップや新規事業において、失敗は避けられません。
重要なのは、失敗しないことではなく、失敗を資産に変えることです。
インシデントが起きたときに、誰かを責めるのではなく、仕組みを見直す。課題が出たときに、場当たり的に対応するのではなく、要件定義に戻す。運用で詰まったときに、現場任せにするのではなく、業務設計を改善する。ユーザーの反応が悪かったときに、機能追加だけで解決しようとせず、そもそもの価値提供を見直す。
この積み重ねが、システムを強くし、組織を強くし、事業を強くします。
TFは、単なる開発会社ではありません。企画、要件定義、開発、運用監視、改善まで一気通貫で伴走する会社です。
安く作ることだけを目的にするのではなく、失敗しにくい開発、失敗から学べる開発、事業成長につながる開発を支援します。
要件定義の解像度が10%上がれば、開発コストは大きく下がります。そしてそれ以上に、プロジェクトの成功確率が上がります。
システム開発を検討している企業様。ベトナムオフショア開発を活用したい企業様。AI駆動開発を進めたい企業様。新規事業を立ち上げたい企業様。開発はしているものの、なかなか成果につながらない企業様。
まずは、作る前に一度立ち止まりましょう。
何を作るべきか。何を作らないべきか。どの順番で進めるべきか。どこにリスクがあるのか。運用後に何が起きるのか。
その解像度を上げることが、開発コストを下げ、事業の成功確率を高める第一歩になります。
TomorrowFuture株式会社は、皆様のシステム開発、新規事業開発、ベトナムオフショア開発、AI活用を、上流工程から運用改善まで伴走いたします。
まずはお気軽にご相談ください。
TomorrowFuture株式会社
代表取締役 根岸 大輔 TEL:070-2021-7382 Mail:daisuke.negishi@tomorrowfuture.co.jp



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